field fire
夕日とトラックター

私は広島市の街外れで生まれ育った。家は兼業農家で、広くない田圃にはこの時期、麦が育ち始めていて、お袋や祖母と麦踏みをさせられた記憶がある。麦畑や田を作る前には土を耕さなければならない。耕すのはもちろん手作業で「向こう打ち」と呼んでいた通称・備中鍬で、三〜四反の田圃を耕すのだが、3人で一週間程掛はかる。
茨城は関東平野の東の始まりで、広大広域な農業地帯だ。一区画が一町歩(1ha = 10,000m2 = 100m * 100m)程の広い田圃や畑を、もちろんトラックターで耕している。
今夕も遠くで、1台のトラックターが勢い良く田圃を耕していた。背後には巻き上げた土煙が夕日に染まって、一瞬美しそうな風景にも機械のパワーを見せつけていた。
昔なら3人で3週間程掛かる作業を、それこそ1〜1.5時間程で完了する。だから派手に土煙が舞うのだ。
乾燥した春風が吹く時には、トラックターの風下に決して入りたくないし、農作業中のお百姓さんには防塵マスクが不可欠だと思うのだが。

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