かつてはこの道を通って小口石材(旧大和村)まで通っていた。川崎の百合ヶ丘から大和村まで、車で7〜8時間は掛かった。超ド級の田舎だと思った。 数十年前にこの道の側を新道が通って、それ以来この道を使うのは犬の散歩か農作業の人になった。 でも、黄昏れた旧街道には昔の思い出が詰まっている。1000ccの小さな車の運転席には、黒々とした髪をなびかせた私がいて、隣には今は亡き秋山礼己さんがギリシャの船乗り帽を被りバンダナをなびかせながら、カールスルーヘのアカデミーについて語っている。 こんな過ぎ去った懐かしい思い出は、私の心の金庫にちゃんと入っている。たまに外部からの刺激でその金庫の鍵が開く。すると心の引き出しから過去の情景が8ミリ映像のようにカシャカシャと出て来て、私をタイムマシーンに乗っけて時空を遡るのだ。