Iceland stone
都市の潜水艦

ほぼ毎週一回は、都内で開かれている展覧会を廻る。右肩には襷掛けしたカメラがぶら下がっている。伊達にカメラをぶら下げている訳じゃなくて、気に入った展覧会や街角の風景を、自分が過ごした時間の証しとして写真に収めているのだ。訪れた展覧会の写真は別にして、撮り溜めた風景を何処かにアップするかしないかは、私の独断と偏見で決まる。
この PHOTO ESSEY が正にそのものなのだが、先日人出が多くなった銀座を歩いている時、ビルの隙間に潜水艦の内部と思わしき怪奇な壁面が露わになっているのを見付けた。しかもダークグレーの機械色に塗られていて、艦をコントロールする暖房設備やエア配管、水道管、電気系統の設備や配管が見て取れる。
ここに迷彩色の軍服を着た乗組員が立ってたら様になるのにと思いながら、シャッターを切った。
道路にはビカピカの超高級車が二酸化炭素を充分に排出しながら列をなし、通りにはファッショナブルな男女が、衣装と目の個性をより際立たせて、華やかに行き交っている。彼らはこんなビルの隙間に感心している爺さんには全く興味は無い。
アメリカの原子力潜水艦が東シナ海で、何かにぶつかって損傷したニュースなんて、彼らにとっては恐らく何の意味も持たないだろうし、何処かの国がミサイルを撃ち放っても興味ないんだろうな〜、なんて考えている自分が、都市空間の中に置き去りになったようで、何かが悲しいのだ。

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