毎年2月から3月は大学が春休みだ。ここ数年はこの時期に外国に行くことが多かったのだが、今年は展覧会のための作品制作や、コミッションための制作等々があり、本来の彫刻の仕事に没頭することにした。そんな中、2週間前に仕事場の大口径石材切削機が壊れて、修理のために半月を要する事態になり、作品制作が前に進まなくなる。悶々とした時の流れと平行して、仕事場周辺は華やかな季節に突入した。ここぞとばかり、私にとっては高価だったカメラを持ち出して、パシャッ・パシャッと風景を切り取りたくなる時期が到来したのだ。制作に追い立てられないフリーな時間がポカッとできたものだから、秘蔵のカメラを大切に持ち出して、家の周りや仕事場周辺をブラブラと歩いてみる。私が熱心なカメラお宅だったら、レンズを数本リュックに入れて、意気揚々と野山を闊歩するんだろうけど、あいにく勤勉なお宅でもないから、取り敢えず家の周りを賑やかしている花を撮ってみた。赤や白や黄色やピンク、梅桃桜、ボケやモクレン、コブシや水仙、コゴメバナ、アンズ等々、名前を知らない大小の多くの野花、花木まで、辺りは花だらけ。家の庭に、白と薄桃色の花を付ける木がある。トラックを駐車するのに邪魔になって、一度は伐採したのだが、こいつ生命力が強くて、あっという間にまた、そこそこの木になってしまった。花木図鑑サイトを見て分かったのだが、八重咲きの梅らしい。小学校の学芸会で作った、ティッシュペーパーの花飾りに似ている。家の前には華やかな桜が咲いて、裏にはこのティッシュ花が優しく咲いている。どちらも妖艶で美しいが、撮るカメラは重かった。