“clouds”

仕事場で北西の空を見上げると、真っ黒な雲の集団が湧き出ていた。雷雲だ。
その雲の先は闇に霞んでいるから激しい雷雨が想像できる。ゆっくりと仕事場に近付いているから、未だ30分は余裕がありそうだ。筑波山の向こうにある我が家に到達するには、早くて1時間半は掛かると思った。
でもこの日の雲は違っていた。空全体の様子が敵を威嚇するイカの体色の様にサッと変わった。まるでどでかい液晶画面を見ているようだった。10分も経たないうちに南に遙か離れた筑波山の向こうまで黒い雲に被われたのだ。
こいつヤバイ!! 家の二階の窓を開けてきた。
仕事場をサッと片付けて車に乗るが、辺りは最早荒れ狂う稲光と横殴りの雨。信号は消え道路は川になって、雷が頭上で炸裂するから体と首は亀のようにちじめて運転する。スピードは出せない。それでも30分後には家に到着するが、市の広報カーが竜巻注意報が発令されましたと、声高にふれ回っていた。最早嵐は始まっている。

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