75    スコットランド・river Flyfishing・world championship代表選考・ファイナルステージ

2010年8月1日。anglers of Scotland
エジンバラでの個展もオープンして、ギャラリーでウダウダと時間を潰すよりスコットランドの川でノンビリとフライラインを投げて過ごしたいと思って・・・、7月31日にエジンバラからバスで1時間半程揺られて Maxton Cross (St.Boswelsの直ぐ側で River Tweedの側)の Jakeの家にやってきた。
翌日・8月1日の早朝に、Jakeと近所に住んでいる Daveが、2011年リバートラウト・フライフィッシング・ワールドチャンピオンシップ・スコットランド代表を決めるためのファイナルステージを監督するのために river Deeに行くらしい。私も同行してみることにした。もちろん私は日本からの取材兼見物客として同行するのだが、一日中川の側にいて、しかも川には入れないというのが物足りないのだが・・・、まあそれは仕方ないとして、スコットランド中のフライフィッシングの猛者が集まると聞いて、一見の価値有りと踏んだ。Maxtonから車で北に2時間半ほど、スコットランドのほぼ中央委に位置する今大会が開催される Dee川に到着した。
集合スポットの側の道の駅の様な田舎のカフェで、目玉焼き・厚切りベーコン・うずら豆のソテーとポテトチップ+トースト、どこの家庭でも食ってる、いわゆるスコットランドの朝の定番をたらふく食ってから、開会式に望んだ。
さすがにスコットランド代表を決めるに相応しく、最終ステージに勝ち残った各アングラー達は、胸までの急流に入っても動じない様な体格のオッチャンが多い。正に百戦錬磨の猛者揃いでの様だ。全員が既にウエーダーとジャケットを身に付けて、今や遅しと開会を待ち構えていた。(写真右上)最終ステージに残ったアングラー約20人の中に、Glant(St.Boswelsに住んでいる)と Robert(昨年、湖に釣りにいった時のメンバー)が残っていた。Glantに "Take it easy" と声を掛けたのだが、彼の目は既にイッちゃってた。
大会の厳正なルールの説明と、川に入るポイントのクジを引いて、各アングラーに付く審査検定員(ゴルフのキャディの様なもの)もクジで決まる様だ。そして競技会はスタートした。
スタートと同時に、指定の地域に車で急行する。
river Dee競技は午前と午後の2ステージに分かれていて、上流域・下流域それぞれ4~5キロの範囲に指定されている。午前が下流域だったら午後は上流域といった具合に、アングラーは指定流域を思い思いに釣り歩くのだ。審査検定員も魚のサイズを測る計測器を持って、アングラーを追いながら河原で釣りを見詰めている。午前午後とも記録は2分割されて記録される。前半に釣ったトラウトの数と大きさ、後半に釣った数と大きさを分けて記録するのだ。何故かというと、前半よりも後半の方がアングラーが既に川に入っている分、魚が警戒して釣るのが難しいのだ。もちろん午前より午後の方が難しい事になる。だから自分の狙った流域のポイントに真っ先に入る事も釣果に影響する事になるから、みんな先を争って釣り場に急行するのだ。
ここ Dee川は、ブラウントラウトやグレーリングが多く生息しているらしく、もちろんサーモンも大量に遡上するらしい。Spay、Tweed、Tayと並んでスコットランドを代表する有名な川だということだ。この時期この風景が日本だったら、アユ釣りの太公望が所狭しと川に立ち込んでいるのが普通なんだけど、幸か不幸かここにはアユはいないから、雄大な風景の中を、川は20年もののスコッチウイスキーの様に孤高としてユッタリと流れている。フライフィッシャーから見れば、正に垂涎の如くに美しい川なのだ。(写真右)
余談なのだが、フライフィッシングのタックルを纏って走るというのを初めて見た。どちらかというと、ノンビリと自然を楽しみながら釣り歩くといったスタイルが私の好みとやり方で、またそれが目的でもあるのだが、まさか何がどう転んでも私は走ろうとは思わないし、釣りで競争しようとも思わないのだが・・・。まあそれは時と場合ということで了承することにして、競技者がいざ川に入って釣り始まったら、見物者はやることが無くなるのだ。ただ人がトラウトを釣ろうとするのを方指咥えて見ているだけである。それも勉強になって有意義なはずなのだが、この時期のブラウントラウトは、運に見放された馬券売り場の大衆をあざ笑っているかの様になかなか食ってこない。時期的にスポーニング(SEX)の事で頭が一杯で、虫なんか食ってる場合じゃないのかも知れないし、スポーニング場所を求めて上流に遡上してしまったのかも知れない。とにかくなかなか釣れないのだ。どのアングラーも苦労しながら1時間に、やっとこ30cm前後のブラウンを1匹釣る程度である。それは後日 Tweed川で釣行した時にも、そうだったのだが、鮭が遡上を始める時期になると、ブラウンを目にしなくなる。10〜15cmの稚魚はワンサカ食ってくるのだが、大物の姿を見るのが難しくなるだ。今年の6月に Tweedで釣行した時には、そこらじゅうでライズしていて、1日平均15〜20匹は釣れていたのだが、8月に入ると1日4〜5匹がいいとこなのだ。グレーリングに関しては、それなりの釣果はあるのだが、とにかくブラウンがいつの間にか姿を消す。私も今回 Tweedで50cmクラスのグレーリングを何匹か釣った。
競技はブラウントラウトとグレーリングのみが対象になる。でかい鮭を釣っても、生きのいいシートラウトをゲットしても点数にはならないから、みんな苦労するのだ。
saward ceremony
私は、午前中が上流ステージの連中(GlantとRobartがいたから)を追って回ったのだが、この時期この時間帯にブラウンがドライに出ることはほとんど無かった。たまにライズは見受けるのだが、サイズ的には小さい魚が多い。ある程度の大きさのブラウン、グレーリングは、流れの強い瀬の石に付いていることが多くて、ニンフを沈める釣りかフレンチニンフ釣りが釣果を上げていたようだ。朝の10時から夕方5時まで釣り歩いて、1人平均30〜40cmのトラウトを4〜5匹かなあ。とにかく見た目よりハードな釣りだった様だ。
俺だったら今の時期はここを責めるのにと思いながら、河原に座って人が焦るのを見るというのも悪くはないのだが、やはりアングラーの一人としては、競技には参加したくないものの、やはり自分の手で釣りたいと思うこと頻りだった。
競技が終わって、表彰式とレセプションの会場に移動した。ビールとサンドイッチなどの軽食を口にしながら、1日の釣り談義に花が咲くのだ(写真左)。猛者でごった返すレストランの中で、大会委員連中が時間を掛けて集計を纏める。そして来年のワールドカップ・スコットランド代表が決定するのだ。
ビールを飲み始めて30分が過ぎた頃、大会実行委員長から今期の成績発表があり、そのリストが配られて、上位3名だけがリールやラインといった景品を授与された。Grantは惜しくも次点で、代表にはもれたようだ。焦りさえしなければ、彼の実力はワールドチャンピオンにも成れると思うのだが、大会前に目がイッちゃってたからなあ。結果としては残念だったのだが、でもまあそれで川が無くなる訳じゃないし、みんな和やかに懇親していたのが印象的だった。Robertは入ったんじゃないかったのか。
今回私がとても勉強になったのは、彼らの作るフライの技術と、川を平気で歩き回るバランス感覚である。ドライフライにしてもニンフにしても、それぞれが卓越した技と制作感覚を持っていて、適材適所、今の時期に合った正に釣れそうなフライを数多く作って携行しているのだ。そして、彼らは急流に入っても水をザバザバ割って平気で歩き回る運動感覚を持っているらしい。私は何時も足下のヌルヌル石の状況を確認しながら恐る恐る歩くのだが、彼らは熊が流れを楽しんでいる様に何の不安もなく歩く。私は体重も上背もないから、とにかく流されない様に転ばない様に慎重に歩くしかない。やっぱ不利だよなあ。
ロッドの使い方、ラインの投げ方、ラインコントロール等は、それぞれが非常に個性的で、敢えて勉強になったとは思わなかったのだが、上記の2点は、体格差があるにしても非常に参考になった。

今回の訪英では、8月6日〜10日の5日間と、14日フルに1日 、Tweedリバーで過ごした。しかしながら遂にそこそこのサイズのブラウンにはお目にかかれなかった。
前回6月の訪英で river Tweedに入った時には、60cmギンピカの春サーモンを釣り、翌日に同サイズのシートラウトを18番の小さなグリズリーパラシュートで掛けたのだが、ネットに入れようとした瞬間に猛然と走られて、60ヤードのバックラインの限界で敢えなくティペットがブレイクしてしまった経緯がある。
今回、 私の立ち込んでいる直ぐ側で、鮭が悠然とジャンプする光景はよくあったのだが、6月と比べて魚のサイズが違う。私の持って行った 9f-#6の ZAXISではとうてい太刀打ちできない。残念ながら敢えて無視することにして、シートラウトとグレーリングを狙った。
シートラウトは前回(6月)5Xのティペットでばらしているから、今回は3Xにニンフというタックルでリベンジするが、2回とも食いが浅かった様で、またもや釣り揚げられなかった。でもグレーリングは45cmを筆頭に何匹か釣ったのだ。
何と言ったって、スコットランドはこれからが本番のサーモンシーズンに入る。既に今回もダブルハンドの #10〜 #14番ロッドで、何人かがサーモンを揚げていたようだ。



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