74    年越しトラウト

2009年12月30日〜2010年1月3日、年末年始はお袋と一緒に広島で過ごす。
今回はファミリーで帰広したので、息子とFishingを楽しもうと思い、フライロッドとタックルを持参した。とは言っても川は禁漁期に入っているから管理釣り場に行くしかない。
広島の管理釣り場は初めてで、何所にどんな釣り場があるのかサッパリなので、とり急ぎネット上で調べると何カ所かある。どこも中国山地(島根県境)に近い辺りで、冬は雪国広島の降雪が問題でなのだ。天気予報を調べて、12月30日は曇りながら降雪は無いらしい。早速午後から釣りに出掛けることにした。広島北インターから高速道に入り北に向かう。高速道に入った直後から風景の中に残雪が点在しているのが見え始めた。やはり広島は雪国なのだ。
この日は、中国縦貫道を30分ほど大阪方向に行き高田インターから出て、一般道を15分ばかり走った所にある「フィッシングレイクたかみや」に行くのだ。snow in Hiroshima車の走る路面には雪はないのだが、道端には除雪した雪がゴソッと積まれている。
この管理釣り場は、農業用のダム湖にトラウトを放って、ルアーマンとフライフィッシャーに解放しているらしい。水深16m余りの深場もあって、自然の景観も保ちながら魚種も豊富だというネット上での謳い文句である。ただ、フライフィッシャーにとって、バックを気にせずに遠投出来るスペースがないのが玉に瑕かも。もちろん遠浅の場所でウエーダーを着て立ち込めばいいのだろうが、辺が雪を被った状況で水に入る元気はないから、唯一高さ3.5〜4mの堰堤の下から、バックを少し気にして投げる場所に入るしかない。距離にして100m程続いているのだが、既に午後と言うこともあって回りの釣り人を気にしながら空いた空間に陣取って、水深1.6m辺りをターゲットにマーカー+黒系のマラブー10番フックで攻めてみる。
ほとんどがニジマスなのだが、結構食ってくる。でもサイズが出ないのだ。
同じシステムで水深を2mにしてみる。魚のサイズは上がったのだが、私の作ったフライはシンカーが不足している所為か、沈む速度が遅い。そこで小さな鉛の噛み潰しシンカーをティペットの末端に付けて試してみた。これが非常に調子いいのだ。ただ魚がフックを銜えてファイトする度にシンカーが取れてしまうから、一匹釣る度に新しいシンカーを付けなければならないのが少し面倒である。
結局この日は、それぞれが10匹程度釣って、キープしたのが二人で5匹。もちろんスモークをするためである。

年末に降った雪のおかげで中国縦貫道がチェーン規制に入ったために、それが解除されるのを待ってから(正月2日の午後)、もう一回管理釣り場に行った。
お袋がキープしている車はノーマルタイヤなので、高速はタイヤ規制が解除になっても、一般道は除雪が進まないということで、管理釣り場に電話で確かめてからの出発になった。今回は庄原インター近くの「Fisher Resort しょうばら」を選択。結局釣り場に着いたのが午後2時。4時半に納竿するとして残すところ2時間半しかないのだが、せっかく来たのだからせめて一匹くらいは釣って行こうということにして・・・。
fishesここも水深6mはある農業用ダム湖のようだ。先日の「たかみや」と比べて、かなり広い感じである。湖の真ん中辺りを浮き桟橋が縦断していて、そこに立てばバックを気にせずに伸び伸びと投げることが出来る。
正月2日と言うこともあってか、釣り人もそんなには多くない。ノンビリと浮き桟橋で冬の午後をつぶすことにして、タックルは先日と同じ、9f#5ロッドにマーカー&ニンフの釣りである。浮き桟橋の中央辺りで投げ始めると、広すぎてフライを投げるターゲットが無いのだ。遠くに投げても近くでも、何れにしても湖の真ん中なのである。ライズでもあれば、投げる目標ができるのだが、ニンフを沈めてマーカーを見ながら時折ピッピッと短く引いて小さなアクションを付けるというノンビリとした釣りがしたいから、何所に投げても成立するのだ。
私の作ったニンフはどういう訳か良く釣れる。2時間半釣りをして、二人で14〜15匹釣った。その内のヤシオマス2匹(ヤシオにしてはちょっと小振りな46cm)をキープして納竿した。
捕った魚は、サイズや味に関わらず必ず食べる。これが人間の狩猟採集行為としての鉄則だと思っているので、家に持ち帰った魚はスモークすることにする。何と言ってもスモークしたトラウトが一番旨い食べ方なのだ。写真は年末にスモークしたトラウトである。ご近所におすそ分けして残りを元旦に頂いたのだが、抜群に旨かった。
smoked fishes私が作るスモークは旨いのだ。ものの本では魚に風味を付けるために、ソミュール液という塩・胡椒・ハーブ系の香辛料の入った液に数時間漬け込んで、その後流水で数時間塩抜きしてから乾燥させ、スモークするのが常道らしいのだが(以前・この雑談に書いた・今はアーカイブス「過去の雑談記-1」にある)、私はこれら面倒な工程を省くのだ。
魚の鱗を取り腑を出して、タオルで魚の水分を拭き取り、直ぐに塩・黒胡椒・ハーブ系の香辛料をタップリ振りかけて、一晩と半日乾燥させる。翌日の午後から4時間〜5時間スモークするのだ。
ここで問題になるのが塩の種類である。しょっぱいだけの塩は使用不可。味のある一寸甘みを感じる塩を使うのが原則。
広島では大きめの段ボールの箱を組み立てて、段ボールの上に針金を通して、それに魚を吊り下げるという実に簡単なスモーク方法なのだが、これが実にパーフェクトなのだ。中の温度が60〜70度にキープされて完璧な温燻(少し温度を掛けて燻製にすること)になる。スモーク材は棒状にチップを圧縮(5cm柱の線香のようなもの)してあるものを買ってきて、棒の端に火を点けるだけで優に3時間は燻っているから実に簡単だ。
興味在る方は試されても良いのだが、問題は人家が密集したところでは近隣から苦情が出るかも。詰まるところスモークは田舎暮らしの特権にならざるを得ないのかも知れない。仕方ないねえ。
年が明けて11日、師匠の鉾田さんと釣りに行った。ここで釣った数は私の方が多かったのだが、ゲットした最大は師匠の55オーバーのヤシオマス。結局3匹をキープして翌日の雨の中でスモークした。やはり大きな鱒の方が脂がのって数段旨い。
スコットランドでもブラウントラウトのスモークが出来れば嬉しいんだけど・・・。彼らは自然保護のために全てをリリースするからなあ・・・・。郷に入っては郷に従えという事で、これも仕方ないけど、私の漁師本能としては、ちょっと残念かも。



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