52    トリノ

Torino city-15月13日の午後に成田を出発して、ローマで乗り換えてトリノ空港に着いたのが同日の夜11時を回っていた。
空港からタクシーでホテルに行く予定だったから、とにかく急ぎ足でカスタムを通過して到着ゲートを出たら、私の名前が書かれた紙を持って立っているオジサンが居た。今回の展覧会委員長リカルド・カルロ氏自らが出迎えてくれたのだ。イタリア語が全く解らない私としては、夜中の空港で右往左往する事なく市内のホテルに着く事が出来たのは有り難かった。
ヨーロッパは何回も来ているのだが、イタリアに入るのは今回が初めてで、トリノは今年の冬季オリンピック中継でしか知らない街だ。
ホテルに到着したのは夜中の12時近くになったが、道すがら町中の通りには人があふれていた。そういえば土曜日なのだ。長旅の疲れも何のその、その街を知るために、先ずは付近の賑やかなバー(パブ)で、一杯やる事にした。因に、ホテルは展覧会が予約してくれた Amadeusuという小さなホテルだが、部屋は清潔で機能も充実している。フロントで英語が通じるから先ずはほっとしたのだ。
Torino city-2とにかくフロントにキーを預けて町中に繰り出した。地理も言葉も全く解らないので、あまり遠くには行けない。帰りのルートをインプットしながら夜風に当たるもの、初めて訪れた町の楽しみ方だと感じながら、賑わっているワインバーを見つけて入ってみた。中は背の高い若者でごったがえしていて、薮に迷い込んだような気分でカウンターに辿り着き、赤のグラスワインを注文してホット一息、再度薮漕ぎをして外に出た。空いたテーブルを見つけてやっと落ち着けたのだが、イタリアでは最近の法律で室内は禁煙になったらしいのだ。
つくばの我が家を出てから、トリノのバーでホット一息つくまで、長い一日だった。
Torino  roadでもこの癒しの一時があるから、遠くまで出かけるのも然程に苦痛じゃない。周りの人たちが何をしゃべっているのか全く解らないけど、まあそれも良し。半時ほど雰囲気とワインを楽しんで、ホテルに戻った。翌朝、リカルドの秘書のマリアさんが小さなアウディーでホテルまで迎えに来た。遠景に雪を冠ったアルプスの山並みが見える風景の中を爽快にドライブして、展覧会会場のAglieカッスルに到着した。Aglieは古い大きなお城で、広大な敷地が展覧会場になる。私の設置場所は既に決められていて、林の中を走る道の一角に設置するらしい。作品の入った木箱8個もその場に届いていて、設置を手伝ってくれる若者もそろった。こんもりと木の茂った薄暗い場所なので、最初はあまり気に入らなかったのだが、午前中に一点ほど設置してみて意外と悪くない。新たな場所を選んでいる時間は残されていないから、とにかく4人掛かりで一日掛けて作品設置を完了したのだ。
さすがにイタリアの昼食は長い。展覧会関係者・報道関係者・手伝ってくれる若者達と昼食を共にしたのだが、ワインを飲みながら前菜から始まって最後のケーキとコーヒーまで、ゆうに1時間半は使ったんじゃないかなあ。午後からの設置を気にしながら、片や旨いワインをおかわりしながら、イタリアの食文化の片鱗を味わったのだ。美味しかった。
中二日という超短期間の滞在中、作品設置が一日で完了したから、残りの一日を自由時間に当てることが出来た。一人でトリノ観光を楽しんだのだ。
directors and I上の写真はどれもトリノ市内の写真である。かつてはイタリアの首都だったこともあるトリノは中世以来の古い町並みをそのまま残している美しい街だ。今年の冬季オリンピックのために街の改造計画やTGB(高速鉄道)乗り入れの計画もあったらしいのだが、住民の反対でどれも実現しなかったらしい。古いアーケードが中心街全域に張り巡らされていて、天候に関係なく主だった地域を歩き回ることが出来る。しかも何処も彼処も風景のほとんどが石なのだ。アーケードの柱は御影石や大理石、建物は大理石・御影石・石灰岩等で、ペイブや道路は御影石・石灰岩等。何と言ってもマンホールの蓋までが御影石なのには驚いてしまった。すり減った石の表面に長い歴史が染み込んでいて、足の裏からビリビリ来るのだ。燻し銀色の空気が街全体に漂っていた。
最後の写真は今回の展覧会のチェアマンのリカルド氏とマリアさんと私の記念写真。

雑談紀行



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