60   異星人?

2007.6月吉日、普段は一月に1〜2度程しか電車には乗らない。しかも夜の混み合った電車の吊革に掴まって、流れ行く車窓の光の中にスライドフィルムのように映り込む半透明な自分の姿に、目を預けることはほとんど無い。
このところ夜の電車に乗る機会が重複して、久々に車窓に映る自分の姿をじっくりとしかも客観的に観察してしまった。正にしてしまったという失策に似た感覚に近いのだが、大局的かつ客観的に見た自分の姿形に、期末テストで自分だけが赤点を取ってしまった時のような、やるせなさに襲われてしまったのだ。
思えば数年前までは、髪の毛の薄い、どちらかと言うと禿オヤジと言われても過言じゃないオジサン連中が、街中や電車内にはイッパイいたんだけど、このところ、そうした希薄な髪の持ち主が激減していることに思い当たる。ほとんど100パーセントに近い皆さんが、育ち盛りのワカメのような豊かな頭髪を保持していらっしゃるのだ。まるで私だけが太陽系外から不幸にも電車内にタイムスリップしてしまった異星人!、寂寞とした疎外感を感じざるを得ないのだ。
巷の豊かなワカメヘッド総てが本物なのか・・? はたまた贋物なのか・・?、なんて重要な問題じゃない。それが蛋白質だろうと石油系だろうと、埋め込みだろうと接着だろうと、良かろうが悪かろうが、近年の中年のほぼ100パーセントの頭が豊かなワカメ状態であることに変わりはない。
文明の進化は、民衆が希求する方向に開花していくはずだ。生物の進化もまたしかり。
総ての状況に照らし合わせてみても、私はこれからの日本国内に於いて、益々もって文明の進展と生物の進化とから取り残される旧人類にならざるを得ないことに確信を深めながら、いや旧人類の道を選ぶ自分に誇りを持たなきゃと思いながらも、寂しく下車したのでした。

ただの雑談

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