雨引の里と彫刻 2019

2019年4月1日 - 6月9日
会場:茨城県桜川市高森地区、青木地区、羽田地区、阿部田地区、全行程13 km

私の選んだ場所は、青木地区・薬王寺に入る参道を左に折れた道と山裾の狭間にある休耕田だ。
昨年の五月に場所を探し回った時は、雑木に囲まれてホッコリとしたいい雰囲気の空間だったのだが、夏になる頃からイノシシの出没騒ぎが増え、辺りの田畑は電気柵が張り巡らされた。私の場所は休耕田で食べ物は無いと思うのだがイノシシに掘り起こされて凸凹になってしまっている。どうやらミミズが目当てらしい。
さて、この空間に展示するに当たり、イノシシに作品を倒されないように、作品の上を歩き回られないように、防御のための壕を浅く方形に巡らせて、その壕の上に鉄メッシュを敷いて、人は渡れるが四つ足の動物は渡れない仕掛けを作り、その方形の空間の中に作品を設置した。
展覧会が始まった初日の夜から翌朝まで強めの雨が降った。翌朝私の展示した休耕田に行ってみて唖然としたのだ。壕も鉄メッシュも水没して作品も床下浸水していたのだ。展示空間に誰も入れない状態。入ったら踝まで泥に埋まってしまう状態なのだ。イノシシよりもやっかいな状態になっていた。
休耕田といえども乾ききっている訳じゃない、水が増えれば田圃になるという基本的な事象を見逃してしまった。
少し高いところに作品を移動させたくても、設置の時に使った三股は立てることが出来ない。三本の足がズブズブと泥に埋まってしまうのだ。
何日か晴れの続いた日、蟹クレーンをレンタルして、田圃にコンパネを敷いてクレーンが沈まないようにして、作品の配置換えをした。壕や鉄メッシュが水没しても人は歩けるように飛び石を設置して通路も作った。結局作品の設置が完了したのは展覧会が始まって6日目だった。
疲れた。

first installing
4月1日初日の設置・水没で歩けない状態
「息を彫る - 1 - 2 - 3」"excavate a breath - 1 - 2 - 3"/白御影石/size: 6.5 m (w) * 5.5 m(d) * 150 cm(h)



4月11日、雨で休耕田は再び水没した。 作品の側までも行けない状態だ。
この風景を見て突然、昔俳句誌で見つけた山口誓子さん作の一句を思い出した。
「美濃げんげ田に墓 近江みず田に墓」
この4次元的というか3.5次元的というか、現代の移動手段(新幹線)があったからこそ詠める句に、とても感動を覚えた記憶がある。
昔から俳句とモノ派との共通点にとても興味があった。天狼を主宰されていた山口誓子さんの俳句に対する考えと、自分の目指している彫刻や立体表現との共通点を見い出して、よく俳句雑誌を読んでいたのだ。

excavate a breath all sculptures
水没場所から避難して再設置した状態でも水は来た
「息を彫る - 1 - 2 - 3」 "excavate a breath -1 - 2 - 3"  2019
excavate a breath - 1
5月になって緑に被われた
excavate a breath - 1
「息を彫る - 2」 "excavate a breath -2" 2019
excavate a breath - 1
「息を彫る - 3」 "excavate a breath -3" 2019
excavate a breath all sculptures
「息を彫る - 1」 "excavate a breath -1"  2019

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