アーチストレジデンス・プログラムのワークショップロンドンの個展に併合した石のワークショップのために、シドニー・ノーラン・トラストを再訪した。最早見慣れた風景だが、先週までロンドンの中心街に住んでいたせいもあって、広い牧場の緑に取り囲まれた風景は新鮮で目に眩しい。今回は石のワークショップ開催が用意されていた。先ずはイギリスの美術大学生を対象にしたワークショップを3泊3日間のスケジュールで開催し、その2日後に一般公募で1日間のワークショップを開催する。私としてはかなりハードなスケジュールである。3日間のワークショップは定員9名という制限枠の中で、各大学から推薦された学生が集まった。ロンドンからは、ロイヤルカレッジから二人、チェルシーから一人、スレードから一人、ウインブルドンから一人。イングランド南西部は、ヘリフォードから一人、ウォレスターから二人。スコットランドから、エジンバラ ECAから一人、名だたるイギリスの美術大学からの9人である。学生といっても大学4年間の学部生が3人で、院生・after graduate から6人の参加である。年齢差が15歳はあると思える幅広い人選だ。わざわざウエールズとの境界線辺りまで出向いて、3日間寝泊まりしてワークショップを受けるというプログラムにアプライする人達だから、私の説明に耳を傾ける目の色も真剣そのものだ。黙々と制作を続行する姿は、既にアーチストの道を歩んでいると思える連中である。彼等に手取り足取りの基本を教えるなんて烏滸がましいし、日本の大学でやってる様なことをチューターしても話がややこしくなるだけなので、彼等の制作に沿うかたちで助言し補助することにした。もちろん石という素材に関しての特徴や、彼らの知らない技術や扱い方は丁寧に教えるのだが、美術という基本的なところでは補足の必要はない。私のコンセプトを彼等に押しつけたところで足手まといになるだけなのだ。西欧の文脈には、石を豆矢(小さな鉄の楔)で割っていく技術や、硬い石(御影石等)を扱う技術は乏しいと言っていい。だから受講者の中には、その技術の習得に執念を燃やす者が何人か居た。私もその技法の伝授にかなりの時間を割いたのだが、最終的に技術面での基本だけは何とか伝えられたと思っている。後は各自が経験を積み重ね、技術を自分のものとしていくしかない。夕食後は夜のプログラムになる。3晩に渡りワイングラス片手に各自が自作のプレゼンテーションをした。今まで制作し発表してきた仕事や取り組みを、そのコンセプトと併せて映像で発表するわけだ(写真左)。それぞれの作風やコンセプト、マテリアルや表現方法は多様で、映像としてのプレゼンテーションもそれなりに充実していた。もちろん作品に対する質疑応答もあって、連夜2〜3時間使ったプレゼンプログラムも有意義だったようだ。最終日(水曜日)の午後から、今回制作した作品の講評会をやった。短期間だったが全員2〜3個の石に取り組んでいて、3日間とは思えぬ力作もあった。私が感心したのは、それぞれが自作に自信を持っていることだ。3日間掛けて真剣に取り組んだ結果として、出来映えの差は有るにしても、9人9様の個性とコンセプトに、それぞれが自信を持っているのだ。全てのプログラムを終了し、第1回のワークショップは閉幕したのだが、ロイヤルカレッジからの二人が居残って制作を続け、その夜も泊まっていった。昨夜までは総勢13人いたのだが、水曜の夜は私とロイヤルカレッジからの二人だけである。ワインを飲みながら、色んな話に盛り上がった。特にメディアアート及び Fakeについての話は、私にとっても有意義で楽しかった。(写真下は、制作中の写真と講評会の写真である。)
第2回目のワークショップは、それから2日後の金曜日に開催した。僅か1日のワークショップである。たった1日でいったい何が出来る?事前に多くの事を考え思案もしたのだが、結局は成り行きに任せるしかないという結論に達して、当日を迎えた。参加者はやはり9人である。世代的に1回目の学生さんより一回り上の世代が集まった。遠くはロンドンから電車で4時間掛けて来た人もいたり、ウォレスターカレッジ・オブ・アートの教授もいたりして、僅か1日といえども濃い人達が集まった。ワークショップの内容は、先ず導入として、石とはどんなモノか?どう対処したらいいか?石を割るにはどうゆうテクニックがり、切ったり削ったり磨いたりするにはどうしたらいいか?等々をデモンストレーションした後、各自の制作に入ってもらった。既にプランを用意して参加された方が多くて、1日といえども充実した内容だったようだ。石は手じゃ彫れない。正しい道具を作り揃えることが重要になってくる。1回〜2回目を通じて参加者の多くから、次会のワークショップの開催要望が出た。石の道具造りを是非教えて欲しいというリクエストである。今回は日本から送った私の道具を使ったのだが、それらは世界中何処を捜しても売っていないわけだから、各自が自分で作るしかないわけだ。今年の8月、再訪英しなければならない用件があって、その時に出来るかどうか?ロンドンのロイヤルカレッジ・オブ・アートの工房で開催要求があって、ヘリフォード・カレッジ・オブ・アートとシドニーノーラントラストでも同じく開催して欲しいと言われているのだが・・・・?
78 ワークショップ
アーチストレジデンス・プログラムのワークショップ
ロンドンの個展に併合した石のワークショップのために、シドニー・ノーラン・トラストを再訪した。
最早見慣れた風景だが、先週までロンドンの中心街に住んでいたせいもあって、広い牧場の緑に取り囲まれた風景は新鮮で目に眩しい。
今回は石のワークショップ開催が用意されていた。先ずはイギリスの美術大学生を対象にしたワークショップを3泊3日間のスケジュールで開催し、その2日後に一般公募で1日間のワークショップを開催する。私としてはかなりハードなスケジュールである。
3日間のワークショップは定員9名という制限枠の中で、各大学から推薦された学生が集まった。ロンドンからは、ロイヤルカレッジから二人、チェルシーから一人、スレードから一人、ウインブルドンから一人。イングランド南西部は、ヘリフォードから一人、ウォレスターから二人。スコットランドから、エジンバラ ECAから一人、名だたるイギリスの美術大学からの9人である。
学生といっても大学4年間の学部生が3人で、院生・after graduate から6人の参加である。年齢差が15歳はあると思える幅広い人選だ。わざわざウエールズとの境界線辺りまで出向いて、3日間寝泊まりしてワークショップを受けるというプログラムにアプライする人達だから、私の説明に耳を傾ける目の色も真剣そのものだ。黙々と制作を続行する姿は、既にアーチストの道を歩んでいると思える連中である。
彼等に手取り足取りの基本を教えるなんて烏滸がましいし、日本の大学でやってる様なことをチューターしても話がややこしくなるだけなので、彼等の制作に沿うかたちで助言し補助することにした。もちろん石という素材に関しての特徴や、彼らの知らない技術や扱い方は丁寧に教えるのだが、美術という基本的なところでは補足の必要はない。私のコンセプトを彼等に押しつけたところで足手まといになるだけなのだ。
西欧の文脈には、石を豆矢(小さな鉄の楔)で割っていく技術や、硬い石(御影石等)を扱う技術は乏しいと言っていい。だから受講者の中には、その技術の習得に執念を燃やす者が何人か居た。私もその技法の伝授にかなりの時間を割いたのだが、最終的に技術面での基本だけは何とか伝えられたと思っている。後は各自が経験を積み重ね、技術を自分のものとしていくしかない。
夕食後は夜のプログラムになる。3晩に渡りワイングラス片手に各自が自作のプレゼンテーションをした。今まで制作し発表してきた仕事や取り組みを、そのコンセプトと併せて映像で発表するわけだ(写真左)。それぞれの作風やコンセプト、マテリアルや表現方法は多様で、映像としてのプレゼンテーションもそれなりに充実していた。もちろん作品に対する質疑応答もあって、連夜2〜3時間使ったプレゼンプログラムも有意義だったようだ。
最終日(水曜日)の午後から、今回制作した作品の講評会をやった。短期間だったが全員2〜3個の石に取り組んでいて、3日間とは思えぬ力作もあった。
私が感心したのは、それぞれが自作に自信を持っていることだ。3日間掛けて真剣に取り組んだ結果として、出来映えの差は有るにしても、9人9様の個性とコンセプトに、それぞれが自信を持っているのだ。
全てのプログラムを終了し、第1回のワークショップは閉幕したのだが、ロイヤルカレッジからの二人が居残って制作を続け、その夜も泊まっていった。昨夜までは総勢13人いたのだが、水曜の夜は私とロイヤルカレッジからの二人だけである。ワインを飲みながら、色んな話に盛り上がった。特にメディアアート及び Fakeについての話は、私にとっても有意義で楽しかった。(写真下は、制作中の写真と講評会の写真である。)
第2回目のワークショップは、それから2日後の金曜日に開催した。僅か1日のワークショップである。
たった1日でいったい何が出来る?事前に多くの事を考え思案もしたのだが、結局は成り行きに任せるしかないという結論に達して、当日を迎えた。参加者はやはり9人である。世代的に1回目の学生さんより一回り上の世代が集まった。遠くはロンドンから電車で4時間掛けて来た人もいたり、ウォレスターカレッジ・オブ・アートの教授もいたりして、僅か1日といえども濃い人達が集まった。
ワークショップの内容は、先ず導入として、石とはどんなモノか?どう対処したらいいか?石を割るにはどうゆうテクニックがり、切ったり削ったり磨いたりするにはどうしたらいいか?等々をデモンストレーションした後、各自の制作に入ってもらった。既にプランを用意して参加された方が多くて、1日といえども充実した内容だったようだ。
石は手じゃ彫れない。正しい道具を作り揃えることが重要になってくる。1回〜2回目を通じて参加者の多くから、次会のワークショップの開催要望が出た。石の道具造りを是非教えて欲しいというリクエストである。今回は日本から送った私の道具を使ったのだが、それらは世界中何処を捜しても売っていないわけだから、各自が自分で作るしかないわけだ。今年の8月、再訪英しなければならない用件があって、その時に出来るかどうか?ロンドンのロイヤルカレッジ・オブ・アートの工房で開催要求があって、ヘリフォード・カレッジ・オブ・アートとシドニーノーラントラストでも同じく開催して欲しいと言われているのだが・・・・?