sky in Holland
オランダの空

空は何所にでもあって、何所から見ても同じ空の延長なのだが、これは一目見て日本の空じゃない。
カンジンスキーの様な帯雲のラインが縦横無尽に走っている。いやこの濃淡は水墨画?いや堀浩哉のラインに近いのかも知れない。なんて想像しながら空を見上げるのだが、これは単なる飛行機雲なのだ。べつに絵画を意識して飛行機が交差し合っている訳じゃない。
この空では縦横無尽に、言い換えれば一見支離滅裂に飛行機が飛んでる様に感じるのだが、それぞのラインには意思と目的がある。
日本は横長の国で、しかも空は部分的に米軍と自衛隊と民間機が仲良く住み分けているから、雲を作る様な飛行高度の高い民間機は、同じ空域を一定流儀のお作法の様に行儀よく平行に通過する。だからこんなアブストラクトなラインは表現されないのだ。
美術的に言うと、ヨーロッパの空は、恣意的な構成主義もしくは抽象表現主義的なのだ。

(昔ドイツの空を見上げて何時も思っていた。白く光る小さな点が、チョークの様に青い空に直線を引いて行く。そのラインの一本一本が目標と方角を持っていて、先端の小さな点の中には数百人が集団で腰掛けているのだ。
私は悶々と彫刻作業を続けながら、空を見上げては、自分が深い海底に捕われている様な気分になった。いつの日か、あの点の中に座る事が出来れば遥かな日本の地上に帰れる。)

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